皐月の茶事～みんなそろって～
風薫る5月、新緑が美しく目に眩しい季節になりました。爽やかで、時に初夏を思わせる暖かい風はとても心地よく、いつもならばどんなに気持ちを浮き立たせて過ごせていただろうと思うと、青空を見上げながら切なくなります。
4月16日に「新型コロナウィルス感染症による緊急事態宣言」が全国に発せられて、はや1ヶ月がたとうとしています。2月3月と少しずつ重苦しい空気が増していき、ついには世界中がこんな5月を迎えることになろうとは、新年を迎えた時には思いもしませんでした。
それでも、多くの人たちの努力により、たとえ小さな明かりでも見え始め、ここ新潟でも緊急事態宣言による措置の一部緩和を受けて、さほど生活が変わるわけではありませんが、今までより呼吸が楽になったような錯覚を覚えました。
そして “ 母の日 ” を明日に控えて小柳茶道教室では皐月の茶事をさせていただきました。
迎え花として玄関に青紫色のカーネーションを生けました。これは私がもらった花ですが、名前をムーンダストといい 花言葉は永遠の幸福だそうです。5日の “ 子供の日 ” と明日の母の日、そして６月に来る “ 父の日 ” を３つ合わせて、みんなが幸せであって欲しいと願いを胸に生けました。
皆さまはいつもと違う、行楽のないゴールデンウィークをどのようにお過ごしですか？私も本来ならこの時期は、４月に開催される加茂市の雪椿まつりで慌ただしく過ごし、今年は「雪椿茶会」のお席を持つ予定でしたので、その後片付けに追われて 例年ゴールデンウィークは疲れ果てているのが恒例でした。
もちろん今年は雪椿まつりそのものが中止となり、突然の長いお休みをいただくこととなりました。それなので私は家の中で出来る、普段なら時間がなくて出来なかったことを、なんとか楽しいことに変えられないかと試行錯誤していますが、中々難しいものですね。今はお茶のお道具の片づけなどをしていますが、これはあのお茶会で使ったものだとか、あの時はあんな失敗をしてしまったなどなど、色々なことが思い出されています。
茶事の様子 Ⅰ
久しぶりのお稽古をするにあたり、今年初の風炉点前で、ささやかではありますが茶事として始めることにいたしました。天候に恵まれた5月の良い日和に、この一時だけは穏やかにただ目の前の一椀のお茶に無心になり心を集中したいと思いました。
生徒さんたちも、久しぶりにお茶を点て そしていつものように静かにお茶をいただく、只それだけのことをとても喜んでくれていたようで、お稽古を再開してよかったと少し安堵しています。
こうしていられるのもすべて、新型コロナウィルス感染症と最前線で戦い頑張っていらっしゃる多くの方のお陰で、私たちの生活を守ってくださるたくさんの方々に感謝しております。私たちに出来ることは、自分の生活を振り返り自重し、状況が少しずつでも良い方向へ向かい、一刻も早く皆で心から笑える日が来ることを祈るばかりです。
茶事の様子 Ⅱ
お菓子は、主菓子（左）には “ よもぎ野 ” （三英堂 謹製）を使いました。新よもぎの淡い香りが清々しく、小豆の甘さとあって春の恵みを感じさせてくれます。
干菓子（右）には “ 花咲かりん ” （賀門 謹製・・手前）と 、“ 京の季～端午～ ” （七條甘春堂 謹製・・奥）を使いました。花咲かりんは可愛らしいミニチョコを使い、その儚くサクサクとした食感がとても気持ちの良いお菓子です。そして、麩焼煎餅に端午の節句の絵柄を和三盆糖で描いたこの干菓子も、薄甘く歯触りの良いお抹茶にあう美味しいお菓子でした。
美味しいお茶と美味しいお菓子をいただきながら、当たり前のように話し笑いあえるそんな日が１日も早く訪れることを願いながら、生徒さんたちとまたお稽古に励んでいきたいと思っております。